宝石珊瑚の歴史4 護身符から装飾品へ
古代には「護身符」として愛用され
近代には女性をいろどる美の象徴へ
宝石としての珊瑚の見方は、古代と中世、
そして、近世で大きく異なっています。
人類の長い歴史の中で、古代の人々は、
否応なく自然に従わなければならず、天変地異や
猛獣や毒蛇などと裸で対決するしかなかった
ものですから、こうした自然の脅威から自己を
守るために「護符」や「呪術」に頼ったのです。
そのために、神秘性のある宝石は「護身符」
として身につけられ、宝石珊瑚以外には、
ルビーやエメラルドなどにも護身的な力が
あると考えられていました。
中世になっても、依然として、このような思い入れが
残っていましたので、宝石珊瑚は、武運長久の
護り札として使われたり、その薬効を信じて医薬品
として処方されたりするようになりました。
しかしながら、古代人が自然を中心に生活していたのでに
対して、中世の頃には、各々が信仰する神を中心にした
文化が形成されていましたから、宝石珊瑚は、神に
捧げるものとして「寺宝」や「祭事器具」としても
用いられることになったのです。
また、同時に、中世では、封建制度維持のための
階級制度が重要になっていましたから
宝石珊瑚は、いわゆる特権階級のシンボルとしても
尊重されるようになりました。
近世になると、人類は自我に目覚めて、
ルネッサンスをはじめとする人間中心の華やかな
文化を形成するようになりました。
そしてこれ以降、宝石珊瑚は、人が美しくなるため
の「装身具」として、また経済力を保証する
「財宝」として使われることになりました。
やがて、民主改革によって封建制度が崩れ、
広く、一般大衆に宝石が解放されると、
それまで特権階級の象徴であった宝石珊瑚が
ようやく女性たちのものになったのです。
・・・・・・宝石珊瑚の魅力より
2017-09-28